大判例

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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)8889号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

三増改築にかかる紛争と使用貸借契約の成否

前記認定事実、<証拠>によると、次の事実が認められる。

原告らは、昭和三八年七月一三日ころ被告の無断増改築を気づくや即日口頭で工事中止を申入れ、重ねて同月一七日到達の内容証明郵便で厳重に工事の中止を申入れたが、被告は右申入れを無視して工事を続行したので、同月二三日朝原告川島銀次郎は不動産業者である田中吉五郎と一緒に被告宅を訪ね、被告夫婦と面会し、両名に対し、工事の強行について不満を述べ、解決策として、本件土地の賃貸借契約を新しく結び直して権利金(更地価格の五パーセント相当額)を支払うか、権利金も地代も支払わずに昭和五一年四月三〇日の期限が来たときに明渡す使用貸借にするか、そのどちらかにするように申入れたところ、被告側では、権利金を支払わない方が得だということで、使用貸借を希望することにしたので、原告川島銀次郎は持参していた覚書を取り出して被告に署名を求めたところ、田中冨太郎がまずこれを手に取つて読んでからその末尾に被告に代つて被告の氏名を署名し、被告は冨太郎が読んだうえで署名をしたので右文書の内容がさきの話合いと違つていないものと考え、自分ではその内容に十分に目を通すこともしないで被告名下に捺印をしたこと(被告は、甲第五号証の被告名下の印影が被告のものでないと否認しているが、右印影は成立に争いのない甲第八号証の三、第九号証、乙第二、第三号証の印影と同じものと認められるので、その印影は被告の意思に基づいて押捺されたものと推定すべく、甲第五号証は全部真正に成立したものと認められる。そして、その内容は、さきに認定したとおり、話合いの結果と相違しているものではないので、被告が右捺印にあたつて了解していたことと右文書の内容とにそこがあるとはいえない。)、その後被告は原告に対し権利金や増改築の承諾料を支払うこともせずに工事を続行し、床面積一二〇、六四平方米の二階建住宅(本件建物)を完成させていること、以上の事実が認められる。右認定に反する証人田中冨太郎の証言、被告田中昌子の供述(第一、二回)は、曖昧な個所があり、前掲証拠と対比して措信できない。

右認定事実によると、原告らと被告との間で、昭和三八年七月二三日紛争の解決策として、本件土地についての従来の賃貸借契約を合意解除し、新たに返還期限を昭和五一年四月三〇日とする使用貸借を締結したものと認められる。もつとも、右甲第五号証は下書きのような体裁なもので、乱雑に削除もされており、また一通より作成されず、被告には交付されていない点(このことは、原告川島次郎の供述から認められる。)、本件のような契約の締結の仕方としては慎重さを欠いている嫌いがあり、また被告が右約定に拘らず昭和三八年七月末に七月分の地代を提供し、それ以降も月末に地代を提供していること(被告田中昌子の第一回供述から認められる。)は、右約定の趣旨について被告の理解が十分に徹底していなかつたことを推認できるが、これらの事情を考慮するとしても、前記使用貸借の成立を否定することはできない。

(山田二郎)

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